メッセンジャー
最近、読み終わった本です。最後のページまでいく間に、何冊も別の本を読んで居たせいですが、結局全部読み終わるのに、3ヵ月くらいかかった気がします。用語がでてくるたびに、意味について色々熟考しながら読み進めて居たせいもあるんでしょうけど。
この本の内容は、アメリカのメイン大学の社会学の教授が書いた、彼の地元のキプロスの霊能者・ヒーラーであるダスカロスのルポルタージュ、記録みたいなものですね。でもそれに関しては、ネットのサイトとかで、ダスカロスの教えが正確に描写されていない、といった意見を見たことがあります。
本の印象としては、シュタイナーや神智学に関する本と似た理論や思想を感じたというのが一番です。シュタイナーの、特に彼が40歳以降から講義しているようなこととは特に、細かいことや用語の差異なんかを言わなければ大枠はほとんど共通してるんじゃないでしょうか。
ダスカロスについて書かれた著作はこれが初めてだったので、他の人の著作でまたダスカロスから違った印象を受けたらわかりません。
霊能者が本当にいるか、は18世紀ヨーロッパのスウェーデンボルクに関する議論なんかを想起させます。自分も正直、幽霊っぽいものを見たことはあるっちゃありますが、それを強いストレスや統合失調症みたいな精神状態でみた幻・妄想、と言ってしまえば全部そうなりますね。だから、個人的には霊現象があるなしというより前提として「世界は個々人の解釈がつくる」とは思って居ます。
最終的に、この本で一番印象に残っているのは結局プラトンに関する話と一番最後の著者キリアコスの名前の本当の意味で、結局、この本を買った理由も、立ち読みしている際にプラトンについて書かれて居たページを偶然開いてしまって、そういう話がいっぱい聞けるのかな、って、それで興味を持ったからでした。(実際、プラトンについてはその1ページしか書かれていなかったのですが。)
ダスカロスによれば、プラトンはエジプトで「秘儀参入」をして、ピタゴラスはインドで「秘儀参入」をして、彼らの哲学をつくりあげたそうです。秘儀参入とは、哲学を受け継がれる資格ありとみなされたものだけに哲学を伝承するときに都市伝説的な伝承のことです。
ちゃんとした哲学史的にも、実際に一部はこのダスカロスが言ったことに近い感じでみなされてはいます。プラトンとエジプトはあまり結び付けられることはないですが、ピタゴラスは伝説上「東方に旅をした」ことになっています。
哲学史的にはインドの思想をピュタゴラスが吸収し、そのピュタゴラスのつくった教団の思想家からソクラテスが影響を受け、そのソクラテスの言動をプラトンが記録した、といったもそう矛盾は発生しません。ピュタゴラスは万物の源は数である、と考えました。その「数のアルケー(万物の起源)」はユダヤ神秘主義っぽい考えだな、と思ってはいましたが、むしろピタゴラスから影響を受けて中世のユダヤ神秘主義の数秘術的側面はできているかもしれません。
この辺の歴史観も含め、シュタイナーに似て居ます。シュタイナーは「プラトンが転生した魂がいま(シュタイナーの時代なので、20世紀初頭のことですが)学校の哲学の授業でプラトンについて学んでも、全く理解できないだろう」と講義録のなかで言って居たのを覚えています。
思想史的に考えれば、そういった神智学・人智学的発想は19世紀前後に流行し、現代のスピリチュアルまで続いているわけですが、「歴史学的に考えると」ダスカロスはそこから影響を受けていることにもなりえますし、より「スピリチュアル学的に考えると」シュタイナーもダスカロスも同じ人類の真実を全て記した「アカシックレコード」に精神的にアクセスしたため、そのアカシックレコードの記述から同じ歴史観を得ていることになります。
まあある意味でもっと印象的だったのが、一番最後で、この著者はキリアコスという名前の人なのですが、そのキリアコスという名前の意味に「魔法によって生じる魂」という意味がある、と知り合いの古典ギリシャ学者からメッセージが送られてきた、という著述です。
キリアコス本人も、キリスト教の「主」を意味し賛美歌などでよく歌われる「キリエ」のことだと思って居たが、違うのだとはじめて知ったと書かれていました。実際自分も、この人の名前の意味をそのように解釈していました。
そのことはLiddell & Scottのギリシャ語の辞書にその意味が書いてあると叙述されています。一般的にその辞書はLSJと呼ばれて居て、最も詳しいギリシャ語辞書のことです。
自分が大学生だった頃習っていたギリシャ語の先生のつくえにあって、ギリシャ語をやる上で一番スタンダードとなり重要な辞書としていわれたものです。分厚いゲーム攻略本とかのことをよく「鈍器本」と呼ばれますが、鈍器本としてこのギリシャ語辞書はかなり攻撃力が高く強力な部類に入るでしょう。あの頃は、厳しい先生が毎週出すギリシャ語の問題を解くのに毎日4時間も5時間もかかって、ストレスで食欲もなく1日1食、果物だけ食べているようなときもありました。
まあ、それはさておき、そんな懐かしくよく見知ったLSJなんていう言葉がでてきてしまい、早速調べてみました。LSJは、大鈍器本を持ってなくても、ネット上で見られます。
これですね。このサイトで、昔自分は毎週の宿題に出てくる古典ギリシャ語文の単語が格変化どうなっているのか、動詞がどうなっているのか、一語一語検索にかけながら訳していたら、いっつも宿題こなすのに4時間とかかかったものです。
まあ、このκυριακός(キュリアコス)の意味のなかで、I. of or for an owner or master, II. belonging to the Lord,と意味が書かれ、III. spirit invoked in magicと書かれています。このIII.が「魔法によって生じる魂」ですね。この3つの意味のなかで、これが一番古い意味なのかもしれません。PMag. Par. と呼ばれている文書がその意味の参照元のようです。
PMag. Par.って何!?って思って、検索したのですが、こちらはわかるのに時間がかかりました。こういう学問系のものは、略語を使いまくって、それもどこにもその意味が書いてないことが多いので、先生とかに聞いてもわからない場合も多く、大変です。
昔、ネットのちょっとオカルト系サイトとかで、ギリシャ語パピルスという魔術書について書いてあるのを見たことがあります。それのことかな?って思いながら調べていたら、実際そうでした。Papyri Graecae Magicae (ギリシャ魔法パピルス)と呼ばれるものでした。英語とかはwikiがありますね。PMag Par というよりPGMと呼ばれるっぽいですが…。これが本文なのかな?まだよく読んでないです。
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