歴史物語

 大学や学習塾で教えていた時、大学生や高校生、中学生とかと話をすると、いろいろ漫画やゲーム、アニメ、音楽の好みとかが聞けてよかった。(一番自分と趣味があったのが、中国からの留学生の子だったりしたのが、面白かった。)

 それでいえば、大学のレポート課題もそうだったが、小論文を教えるときに、学生はよく「何を書いていいのかわからない、思い浮かばない」と言う。これは思い浮かんでないんじゃなくて、「思い浮かんでいるけど、書いてはいけない」ということ。

 無意識レベルまで、小学校の狭い世界の先生が期待する文章しか書くことが許されていないからそうなってしまうだけであって、でも自分の好きなこと、趣味とかそういうことについては、割とクリエイティブに書けるはずなのだ。

 まずはそこのブロック外して、好きなこと書いてたら、文章力が上がるものです。プレゼンも、いきなりマジメで難しい話題じゃなくて、好きなものについてプレゼンしていけば、プレゼン力があがるはずです。

 ただ、1割2割くらい、本当に何の娯楽とかエンタテイメントもなく、まじめに勉強だけしていて趣味の話ができないみたいな子もいて、それが一番将来が心配な学生さんだった。実は、教員の人にも、そういう影を感じる人が時々いる。


 好きな話題を、文章としてまじめな話題にもっていくのは、実はそう難しくない。

 漫画、ゲーム、アニメ、とかの話題においてはアールネ・トンプソンのタイプインデックスジョーセフ・キャンベルの神話論なんかは、自分が大学の頃授業で習ったものだけど、良いきっかけかもしれない。物語さえあれば、そこにアーキタイプがあるから、それに関連してこういった研究に照らし合わせることができる。

 音楽もまた、非常に歴史において重要なもので、例えば自分は中世高地ドイツ語が大学で一番長く学んだ言語だったのだけれど、そこには現代のフリースタイルダンジョンとかお互いをディスり合って勝負するラップバトルに通じるものはあると思うし、例えば音楽を聴いて気持ちよくなれるなら、有史以前から続くシャーマニズムと同じことをしているわけだ。


 歴史と物語は、日本語では明確に分けられている。実に不思議なことに、英語でも、似た言葉だけど分けられている(storyとhistoryで、特に意味の深くないhiがわざわざ付いている)。

 ただ、それらはドイツ語では歴史と物語は同じ言葉だし、フランス語も確かそうだったはず。ドイツ語のGeschichte、フランス語のhistoireは、ぱっと文中に出てきたら、その訳が「物語」なのか「歴史」なのか、どちらが適切か、文脈で判別しなけれなならないわけだ。


 この間、時々お会いできる、非常に深い知識と学問的な経験が豊かなとある人と話していてその方が、「高校の歴史はつまらないけど、本来、歴史は人の人生を読むことなんだから、面白いはず」と言っていた。

 高校の歴史は、本来同じ言葉であるはずの「歴史」と「物語」が乖離しすぎていて、一致していない。だから面白くない。

 進撃の巨人や、ドラゴンボールの世界を、歴史の中に探してみればいい。最も権威のある文学であるオデュッセイアには、ワンピースと同じ物語構造があるだろう。

 現代のエンタテイメント全般を前述のタイプインデックスやキャンベルの神話論のように、アカデミックに語ることは可能なのに、学校はそれすら学生たちの無意識に抑圧をはたらきかけている。


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