rajastanis

योगसंन्यस्तकर्माणं ज्ञानसञ्छिन्नसंशयम् | आत्मवन्तं न कर्माणि निबध्नन्ति धनञ्जय

yoga-sannyasta-karmāṇaṁ jñāna-sañchhinna-sanśhayam ātmavantaṁ na karmāṇi nibadhnanti dhanañjaya

繋がることでカルマ(作品)を支配下に置き、知ることで偏見を切り取って、自らを愛せた者はカルマと結びつけられることがないぞ、富を勝ち得た者よ。

(Bhagavat gita 4-41、私訳)

「風が吹けば桶屋が儲かる」は分子的運動だろうか？カルマ論のなかではそれは分子的運動になってしまう。人間を構成する個々の構造物の運動法則は、カルマという運動法則に基づいていることになる。それは論理の飛躍であり、現在の常識に照らし合わせた時、正常な判断ではない。

　ただし、化学が常に世界を「普遍的・客観的」かつ統計・経験的に解釈するのに対して、人間はそのように解釈することができない。人間は自分が見た以外の世界に関しては、情報として知ることしかできないし、常に脳を働かせることもできないし、統計として得られる情報も時間と肉体的限界の両方から、限度がある。もしこの世の化学的事象の情報量に対して人間のスペックは圧倒的に低い。しかし化学的現象を解釈するのは人間である。ちょうどPCが、非常に高画質の画像にアクセスしたとして、PCの表現可能な色の範囲を超えているために、その高画質画像を忠実に再現できないのと同じことが、人間において化学的世界解釈でもおきているだろう。

　カルマ論は、そういった知識に関して人間の有限を知った上で、それでも何か結論を出そうとした結果だ。毎日ひとが太陽が昇り、太陽が沈むのを観測している。そんなときに、明日、また太陽が昇ると皆が思っているが、誰かが「明日は太陽が昇らない」と言ったとしよう。しかし、それに対する答えは「何を馬鹿らしいことを」というよりも「実際に、その時がきてみなければわからない」が知識の答えである。

　毎日太陽が昇り、沈んでいる、だから明日も太陽が昇り、沈む。それは現代思想の答えである。その文脈と同じものとして、人間には多数の限界がある。あれはできる、これはできない。例えば、私が日本にある家で眠ったその次の日朝起きたらエジプトで目が覚めた、ということは起きたことがないので、これからもそれが起きることはない。

　死について、それを当てはめてみよう。多数の観測と統計により、人間は死によって血液の循環やシナプスなどの電気反応が機能しなくなって、意識を失い、いろいろと考えることが終わる。身体中の細胞や分子が性質を持ち、特定の限られた因果性を持っている。その範囲からすると、私が死んでその細胞全てが活動を維持する要素が送られることがストップすると、その全ての機能が停止し、その複数の機能全体のことである「私」もまた停止する。すると私が消え、思考という行為が消える。

　私が思考、または感情を感じるという現象が起きているのは、おもにこの身体が機能していることが理由であるから、もしも私が自殺をすれば、この思考と感情というものは消える。私がいま持っている思考とか感じている感情が苦しい時、自殺をすることでそれらは消える。自殺肯定論の正しい因果式だ。

　痛覚が、そのクオリアが、この世のどこに存在しているのかはわからない。死後、痛覚がまだ存在していたら、自殺は無駄であるか、または痛覚が増大するならば、自殺は無益どころか、大変有害だ。宗教だけが、その可能性を示唆する。そして科学が絶対正しいとは限らない。

　自殺禁止論の無意識は、活動を停止したくない細胞たちの思考回路なのだろうか、それとも未だ観測したことがない死後の世界についての合理的解釈なのだろうか？

　人間の体というのはひとつの社会・政府みたいなもので、細胞のどこかに深刻な問題が生じているのは、例えば社会のどこかで貧困や大きな問題に直面している住人がいるようなものだ。それを拾い上げて助けようとする政府＝身体がいるとしても、その細胞の苦しみが身体にメッセージとして届かない場合もある。

　そうやって、より残酷な感じでサーンキヤ・ヨーガのように、論理的に考えると、気づくのは論理学の一番最初の前提はオカルトだということだ。真とか偽という概念がこの世に存在しているということがオカルトであって、誰も見たこともないし聞いたこともない。宇宙人やUFOよりもずっとこの世に真とか偽があるかどうか全くわからない。

　ヨーガとは√yuj「つながる」という意味だ。誰と繋がるのか？hetuphala「因果」においてhetu「因」をphala「果」にするのはyogaに他ならない。サーンキヤでつながるのか、バクティでつながるのか？