ロギア系とノミア系

 英語で-logyとつくときと、-nomyとつくときがある。

 占星術と天文学を分けるのもこれである。astroに対して、-logyがつけば占星術、-nomyなら天文学。astrologyは「星の学問」でastronomyは「星の法則」。

 古代世界では「星軌道や天体図から未来や性格を読み取る術」もastronomyだった。マニリウスのAstronomicaはAD30-40頃の年代の古代ローマ時代の書物であるが、今の占星術の本に通じるような叙述もある。この書物が示すように、占星術は古代ではastronomyと呼ばれていた。プトレマイオスやヘシオドスも占星術をastronomyと呼んだ。

 古典ギリシア語辞書でも、占星術、astrologiaの意味として、astronomy, a branch of mathematics(数学の一分野)とでてくる。ちなみに、astronomiaもastronomyになる。実際、なんで星を観測して、数式や定義、軌道計算などの現代の天文学と同じ探究を何千年も前から行っていたかといえば、何かそこから、もう重力波でも何でもいいけど、地上に作用するものを見つけたいという、占星術的な欲求があったから、天文学が探究されたのだ。だから現代の英語で言うastrologyの目標のためにastronomyがあって、それらは表裏一体だったのだ。

 アストロノミーである占星術の基本的な欲求は、今も宇宙を通して量子の性質や、それとマクロの物理法則の架け橋を見つけ、存在とはなんなのかと知ろうとする欲求にも部分的に似ている。


 -logyはギリシア語のロゴス、ロギアであって、サンスクリットの√lokにも繋がる。つまり√lokは「見る」という意味で、英語のlookやlocus(local, locationなど)と同じ言葉だ。つまりロゴスとは「言葉」という意味だが、「見た目」の意味もある。サンスクリットの√lokは、観自在菩薩avalokiteshvara bodhisattva(全てを見通すことが出来る主である目覚めた人)のavalokiteの部分のまんなかのlokでもある。


 -nomyのほうは、ギリシア語のノモス、ノミアであって、サンスクリットの√namに繋がる。こちらは、今から六千年以上前の、今戦争しているウクライナとロシアの国境あたりにいたかもしれない狩猟民族たちの言葉が、はるばる英語から日本語にまで届いている言葉で、日本語の南無はまさにこれ。

 もともとは√namは「取る、曲げる」、と言う意味で、サンスクリットやヒンディー語で、南無阿弥陀仏の南無やナマステのナムは「曲げる=おじぎをする」という意味がある。法則とは、鋳型に何かをあてはめることで、曲げることに他ならない。√namの言語感覚では、法則とは先天的なものでなく、後天的な感覚を受け取ることができる。そういったものを、ノモスと呼んだ。英語でいえば、name(名前=型に嵌めること)などにきているが、ドイツ語のnehmen(取る)の過去形がまさにnamになる。


 実際、-logyと-nomyの使い分けは、他のものではどうだろう。ecoにも、ecologyとeconomyがある。ecoは、ギリシア語で「家(oikos)」を意味するので、ecologyは「家に関する学問」、economyは「家に関する法則」、それぞれ、エコロジーは「生態学、環境関係学、環境保全」などを意味し、エコノミーは「経済」を意味する。

 ecologyはギリシア語辞書で元々の形であるoikologiaと入力しても、何も出てこない。確かに「家について学ぶ」と言うと、建築か何か?って感じではある。建築に関する歴史は本当に古いが、環境保全や都市景観的な歴史はそんなに古くない。まだ生態系を壊す程の力も人間にはなかったのだろう。

 代わりに、economyの元々の形であるoikonomiaは結構よく使うことで、今の言葉でいえば「家の管理」、「家計」や「家事」を意味する。だからなんか例えばザ・エコノミストとは、ある意味では「主婦・主夫」みたいな意味にもなるのだ。

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