♅♆12h or ♓️:テレパシー・シンパシー

 ひとは、なんとなくわからないけれど嫌悪感を感じる場所とか対象とか、そういうものを感じることができる。多くの人は、それに対して「気のせいだよ」と言う。

 ものすごくその言葉が面白い。なぜなら、その時の「気のせいだよ」とは現代の言語感性で言えば「そんなものはないよ、大したことではないよ」という否定的な意味なのに、言葉をの意味を言外を考えないで素直に受け取ると「気のせいだよ」はつまり「気は確かに存在していて、あなたが気を感じられる能力を持つせいだよ」とそれは返答に対する完全肯定なのだ。

「気のせいだよ」は言葉の通俗的意味ではオカルトの存在を否定しているのに、言葉の相対的意味では完全肯定してしまっている。


 人間は、嫌悪感に対して、二つの行動を取ることができる。「嫌悪感を感じない努力をする」「嫌悪感の対象から離れる」。動物は、まず後者を選ぶだろう。自分を傷つけられる可能性よりも、傷つけてくるものを避けることは、生存戦略として、理にかなっている。けれど、人間はそこで意見が分かれる。

 嫌悪感の感じやすさは、少なくとも個人差がある。だから、その強さによって、「嫌悪感を感じない努力」のたやすさは、大きく変わるだろう。嫌悪感を感じる強さが大きく、嫌悪感を感じない努力が果てしない場合、「嫌悪感の対象から離れる」の判断にたどり着く傾向は強くなる。

 ジオパシックストレス, HSP, 過敏性胃腸症候群、化学物質過敏症、人間の「嫌悪感」の尺度によって発症する病や精神傾向がある。「嫌悪感」の尺度が小さい人間にとっては、こういった症状を理解することはできないだろう。「りんご」の意味を共有できる相手としか、「りんご」の指し示すものを共有できないように。


「気のせいだよ」はそのような「嫌悪感」の尺度の違いで齟齬が生じているかもしれない。人間の感覚の尺度は先天的な部分があるとしても、少なくとも開発し広げることができる。知識と同じである。知識はその対象を「知っている」間柄でしか共有できないので、お互いがそれを「知る」ことができるなら共有できるし、どちらかがそれを「知る」ことができないなら共有できない。なので、知識の共有は相手が「知ろうとする」ことができるかどうかにもかかっている。感覚もそれと全く同様である。


「知ろうとする」という行為は、実に複雑なものだ。どこからどこまでが先天的なもので、どこまでが後天的なものなのか。よくわからないので、それを昔の人は「縁起(pratitya samutpada)」と呼んだ。もちろん、このサンスクリット語の意味を分解することはできても、解明することはできない。

 ただ、ヘラクレイトスが言う「性格は人間の運命(ダイモーン)を作る」やソクラテスを導く守護霊(ダイモーン)の話、人生には電流の回路におけるスイッチとか抵抗みたいなので道ができあがっているようなところがあり、そこにこの縁起というものを感じざるを得ない。


 そしてその縁起は、嫌悪感でもって道を示すことがある。むしろ、そのほうが多いのではと思うこともある。その時、嫌悪感の範囲というのも大事になってくる。簡単にいえば、「坊主憎ければ袈裟まで憎い」である。

 過敏性胃腸症候群が、ストレスを受けながら食べたものを、別の状況下で食べることでも下してしまうようなるのと同じ、ある対象が嫌悪感とともにやって来る時、あなたはその対象の本質とは関係なく、それが嫌いになる。

 嫌いな教科があるとして、その教科の先生が嫌いだと、その教科も嫌いになることがある。まさにそこで「私はこの教科が苦手」として避けるべきものが発生し、それが進路に影響し、人生ができあがる。

 教科に限らず、仕事の業種、個人の信条、趣味分野、なんでもそうで、それ自体よりも「嫌な人」「嫌な出来事」がセットだと、その対象が嫌いになる。逆も然りで、好きな人とセットでやってくるものは、好きになる。それが運命をつくる。


 嫌悪感というものは、そのような運命をつくる役割を果たしていて、嫌悪感を感じやすい場合、その道筋は極端に抵抗が多く、でも代わりに独特で特殊な回路になるだろう。 

 一体何のために、誰がそんな人間の運命の回路なんてつくっているか、そんな超越者がいるのかなどわからない。しかし同時に、ハイデガーの言う「ダス・マン」や極端には「哲学的ゾンビ」を感じざるを得ない相手というのもどうしてもいるように思えてしまう。何の抵抗もない人生。でもそこに運命もない。

 でも時々ボロがでているようにも思える。「気のせいだよ」と、深い思考の流れなどこの世に存在しないという意味でその言葉を吐きつつ、相対的な発音ではこの世の神秘を表現しているように。

ᚠᛚᚪᚵᛋ ᚠᛚᚪᛪ ᚠᛟᛞᛞᛖᚱ ᚠᚱᛁᚵ

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